2022年3月28日月曜日

2022年度前期大学院「実定法学特殊講義(租税法)」で扱う文献

 2022年度前期に毎週木曜1限に「実定法学特殊講義(租税法)」を担当します。

シラバスはこちらです。

https://kym-syllabus.ofc.kobe-u.ac.jp/kobe_syllabus/2022/43/data/2022_1J257.html

 

シラバスにはアメリカ公法の研究をするように書きましたが、やや範囲を広げて、国際的な公法に関する査読誌である

International Journal of Constitutional Law

に掲載された比較的短い論文を数本、読んでみようと思います。

このような授業を展開する理由は、近年、日本の法学界でも国際的な査読誌に投稿することに関心が寄せられているところ、私は必ずしも国際的な査読誌を継続的に読んでいるわけではなく、どのような論文が国際的に査読誌にアクセプトされるのかわかっていないからです。

 私自身は租税法を中心として研究してきており、憲法・行政法については十分な知見がありません。そのような私が講義するため、論文の内容について高度に専門的な読解を提供できるわけではありません。それでも、私と一緒に英語の論文をゆっくり読んでみたい、と思う方は履修して下さい。

上記の雑誌は、比較公法に関する権威ある雑誌で、この雑誌を母体とした国際学会には興津先生や木下先生がコミットしておられます。私もこの学会に参加したことがあります。

具体的に読んでみようと思う論文は、現時点では、以下の通りです。いずれも、神戸大学附属図書館のデータベースから本文をダウンロードすることができます。


Bosko Tripkovic, The Morality of Foreign Law

N. W. Barber, Why Entrench?

Robert Leckey, The Harms of Remedial Discretion

Sandra Fredman, Substantive Equality Revisited


履修をお考えの方は、第1回の授業(4月14日)に教室にお越し下さい。ただし、可能であれば、事前に、私のメールアドレス(Researchmapで公開しています)に履修を考えている旨ご連絡をいただけると助かります。よろしくお願いいたします。

2021年11月14日日曜日

文書通信交通滞在費の非課税問題

小野泰輔議員による問題提起及び吉村大阪府知事による非課税への批判。

https://twitter.com/taisukeono/status/1459078706320711685 

https://twitter.com/hiroyoshimura/status/1459446482135040000


租税政策の面からも、それ以外の面からも、完全に非課税であることは全く正当化できないと思う。そこで、非課税となった経緯を調べてみた。

 

国会法(昭和22年法律第79号)38条を受けた,国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律(昭和22年法律第80号)に非課税規定がある。

国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律等の一部を改正する法律(昭和41年法律第15号)により、国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律に9条2項が追加される。その内容は以下の通りであった。

「前項の通信交通費については、その支給を受ける金額を標準として、租税その他の公課を課することができない。」

 https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/05119660331015.htm

通信費(通信交通費)については、この規定が設けられる前においても事実上非課税の扱いであったらしい。 1965(昭和40)年8月10日に開催された第49回国会参議院予算委員会におけるやりとり(会議録33ー34ページ)によると、「この前大蔵省から国会に対して手当の問題、通信手当十万円と滞在雑費十二万、合計二十二万円に対しての税金を払ってくれという申し入れがあった」(市川房枝)。これに対して、福田赳夫大蔵大臣は、次のように応答している。

「議員の立法審査費、それから交通通信費、この両者につきましてただいま非課税の扱いをしております。この二つの費目につきましては事の性質上実費弁償であるというふうにも考えられまするが、これが支給される形態から言いますると、他の交通費だとかいうようなものとの関係から見まして課税対象じゃないかというような議論も起こってくるわけです。前の議論、つまりこれが実費弁償だという一面もありますので、私はこの二つの費目につきまして全額課税をするということはこれは行き過ぎかと思うのでありまするが、他の振り合いから見ましてその二つの費目の権衡上の問題から言いますると、また課税すべきかなとも思いまするが、ただいま、これはいずれにいたしましても最高の府である立法府の問題でありますので、まあ立法府のほうでもいろいろお考えのようであります。その折衝の経過等も承知はしておりまするが、なおしばらく経過を、推移を見たほうがいい。こういうふうに考えている段階でございます。」

 市川は、これに対して、次のような見解を述べている。

「実費弁償ということでいままで税金を取らなかったわけですね。けれども一般の公務員、地方公務員、民間では渡しっきりというものは給与と認めるのだということを税務署が通牒を出しておって、そしてみなそれで税金をとっているわけですね。だから私は国会議員だからというので特別に税金を取らないということは国民に対して申しわけないのだ、それで私に言わせれば少しそれこそ歳費か、手当というのですか、ふやすならふやすとしても税金は国民と同じように支払うほうが国民感情としては気持ちがいいのだ、こういうふうに思うわけなんです。(後略)」

https://kokkai.ndl.go.jp/txt/104915261X00319650810
 
このように課税すべきとの意見が当局から示され、有力な参議院議員がこれに賛同したこともあり、非課税であることを規定の上で明確にしたということなのであろう。 また、非課税規定が所得税法に入っていないということが、当時の大蔵省の意地を示しているように思う。

2021年3月22日月曜日

2021年度に担当する授業について

 2021年度に私が担当する授業として予定しているものは以下の通りです。

 

前期

【学部】

租税法演習(火曜日)2単位(大学院の演習も兼ねる)

【法科大学院】

租税法1(火曜日)2単位

R&Wゼミ租税法(火曜日)2単位

【通常大学院】

特殊講義(水曜日)2単位…アメリカ行政法・租税法の最新文献を紹介します。

演習(月曜日)(上記の学部と合併のものと合わせて4単位)…私が指導教員になっている学生さんのみ

Japanese Legal System II (2単位,オムニバス)2回分を担当(6-7月)

ヤゲウォ大学日本法講義 2回分を担当(4月)

【大阪市立大学法科大学院】

租税法(木曜日)2単位


後期

【学部】

租税法演習(火曜日)2単位(大学院の演習も兼ねる)

租税法(第4クォーター,オンデマンド)2単位

【法科大学院】

租税法2(木曜日)2単位

【通常大学院】 

演習(月曜日)(上記の学部と合併のものと合わせて4単位)…私が指導教員になっている学生さんのみ

 

 


 

2020年2月16日日曜日

2019年度租税法期末試験採点基準


2019年度神戸大学法学部租税法 期末試験の解説・採点基準
2020214日 渕 圭吾

1問(配点40点)
法人税法の課税所得計算の仕組みについての説明を求めた。法人税法21条及び22条を引用しておいたので、これらの条文の内容をそのまま写すだけでは不十分である。
概ね以下のように採点した(加点項目は合計10点)。
1)課税所得算定の基本的な仕組み(8点)。益金から損金を控除し(221項)、益金・損金の計算にあたっては直接的には会社法の会計(74条=確定決算主義)、最終的には企業会計に準拠する(224項)こと。「損金経理」についても触れるのが望ましい。
*会社法会計・企業会計への依存を基礎づける政策的な論拠(当事者に対するインセンティブ、手間の削減)についての言及があれば加点した。
2)益金の計算の仕組み(8点)。収益や収入(すなわち、入ってきたキャッシュフロー)という概念に言及してほしい。収益計上のタイミングについて、実現主義ないし権利確定主義、さらには引き渡し基準といったことについて述べてほしい。
*無償取引からの収益発生についての言及(二段階説、清水惣事件等)があれば加点した。
3)損金の計算の仕組み(8点)。益金を基礎に、それに対応する費用を同じタイミングで計上すること(費用収益対応の原則)。(条文に書いてあるが)損金の3つのカテゴリーそれぞれの意義。
*踏み込んだ叙述に適宜加点。
4)その他(6点)。課税年度を人為的に区切っているが、欠損金の繰越控除・繰戻還付を認めており、法人がゴーイングコンサーンであることに配慮していること。
*非営利法人等、課税対象となっている所得が限られている納税義務者についての言及があれば加点した。

2
1】については、以下の(1)及び(2)について基本的な事項が書かれていれば各15点を満点として評価し、深い理解を示すと思われる叙述につき10点を上限として加点した。
1)消費税の様々な仕組みとその中における付加価値税=日本の消費税の特徴。
2)日本の消費税の具体的な仕組み。納税義務者、課税標準、仕入税額控除等。
2】についても、以下の(1)から(3)について基本的な事項が書かれていれば各10点を満点として評価し、深い理解を示すと思われる叙述につき10点を上限として加点した。
1)恒久的施設(PE)の有無により課税の仕組みが異なることの指摘。
2PEがない場合に(非居住者・外国法人に対する)源泉徴収で課税関係が終了することの指摘。
3PEがある場合には、非居住者・外国法人自体が所得税・法人税の確定申告をしかつ租税を納付する必要があることの指摘。

*第1問、第2問については、単に列挙した用語のみを解説する答案が散見された。そのような答案の評価はいきおい低くなっている。

3
映画を実際に鑑賞したことがうかがわれる場合には、基本的に15点を与えた。分析の鋭さに応じて適宜加点した。

2019年度法学部租税法まとめ


2019年度神戸大学法学部租税法(まとめ)

1)租税をめぐる立法・行政
◎租税の定義・租税が果たす機能
◎憲法84条・租税法律主義
◎日本の財政の概要・税収・国税と地方税
○憲法14条・租税公平主義
◎課税要件
○租税確定手続と租税徴収手続

2)租税法に関する分析枠組み
◎課税繰り延べはなぜ納税者にとって有利か
△租税顧客
△租税裁定取引

3)法人税
○法人税の正当化
○法人税と個人所得税の調整
○公益法人等の収益事業に課税する理由
◎会社法・企業会計と法人税の課税所得算定の関係
○収益費用アプローチ
◎法人税法222項にいう収益(条文の内容を確認)
◎無償による資産の譲渡・役務の提供から収益が生じるということをどう理解するか
◎収益の帰属事業年度
◎損金の3つのカテゴリーと費用収益対応の原則
○減価償却費とは何か
○欠損金とは何か
○組織再編・企業結合に関する税制の基本的考え方

4)消費税
◎消費税の意義とその分類
◎付加価値税(間接税としての多段階一般消費税)の仕組みの特徴
○どのような国内取引に課税されるか
○どのような輸入取引に課税されるか
○非課税取引にはどのようなものがあるか
○免税取引にはどのようなものがあるか
◎消費税の納税額はどのように算定するか(esp. 仕入税額控除とは何か)
○日本における消費税の歴史
○平成28年度税制改正で新たに導入された仕組みとは

5)国際租税法
○国際的二重課税はなぜ生じるか
◎非居住者・外国法人に対する課税の仕組み(esp. 恒久的施設とは何か)
◎居住者・内国法人の国際的二重課税排除のための仕組み
○移転価格税制とは何か

2020年1月21日火曜日

2020年1月20日神戸大学法学部租税法授業補足

2020年1月20日の租税法の授業でお話しした,恒久的施設帰属所得についての「独立企業の原則」について補足します。
慌てていて,前提を申し上げるのを忘れていました(ご質問くださった方に感謝します)。

恒久的施設(例えば,支店)の所得を算定するに際して,条文にも書いてあるような「独立企業の原則」という擬制を用います。これは,支店と本店(厳密に言えば,法人のうち支店以外の部分)とが同一人格であり,それゆえ,支店と本店の間に私法上の取引が成立しない(存在し得ない)ことを前提に,あたかも支店と本店が別の法人格を有し,かつ,両者が独立当事者間の関係で取引した場合に成立する対価が支払われたとみなすことを意味します。

授業中に挙げた例で言えば,銀行の本店から支店に対して100万円を渡し(これは,同一法人格の内部なので,私法上は「無」です),支店がこれを顧客に対して貸し付けたとします。この場合,通常の独立企業間(この例では,銀行相互間)で支払われる利子率が6パーセントだとすると, 支店から本店に対して年間6万円の利息を支払う,とみなすことになります。

以上の問題については,学会デビュー論文を基にした著書『所得課税の国際的側面』で論じています(授業との関係では読む必要はありませんが)。

2019年4月14日日曜日

南野森編『〔新版」法学の世界』(日本評論社,2019年)

2013年に別冊法学セミナーとして刊行された南野森編『法学の世界』(日本評論社)が,一部執筆陣を入れ替えて,新版として刊行された。旧版は,法学部・法科大学院で勉強する内容や法学研究の最前線の動きを的確かつオーソドックスに紹介していた名著であった。私自身,旧版における叙述から多くを学び,また,知らなかった文献を手に取った。

新版では,いくつかの法分野で執筆者が入れ替わっている。民法については西希代子(慶應)から原田昌和(立教)へ。刑法については橋爪隆(東大)から和田俊憲(慶應)へ。国際法については寺谷広司(東大)から森肇志(東大)へ。行政法については磯部哲(慶應)から興津征雄(神戸)へ。労働法は桑村裕美子(東北)から大内伸哉(神戸)へ。社会保障法は笠木映里(ボルドー)から永野仁美(上智)へ。商法は川村力(北大)から得津晶(東北)へ。民事訴訟法は八田卓也(神戸)から垣内秀介(東大)へ。刑事訴訟法は笹倉宏紀(慶應)から緑大輔(一橋)へ。法哲学は大屋雄裕(慶應)から 安藤馨(神戸)へ。英米法は安部圭介(成蹊)から溜箭将之(立教)へ。租税法は藤谷武史(東大)から神山弘行(一橋)へ。経済法は滝澤紗矢子(東北)から大久保直樹(学習院)へ。知的財産法は島並良(神戸)から小島立(九大)へ。

新規に,少年法(武内謙治=九大),情報法(成原慧=九大)が加わっている。憲法(南野森=九大),法社会学(飯田高=東大),フランス法(齋藤哲志=東大),倒産法(水元宏典=一橋),環境法(島村健=神戸),国際私法(横溝大=名大)については執筆者の交替はない。「海外留学よもやま話」の4名の執筆者はいずれも入れ替わっている。

ざっと目を通したが,この新版も,自信を持っておすすめできる本に仕上がっている。南野さんと編集者である上村真勝さんの力量に頭がさがる。 法学に関心のある社会人の方はもちろん,法学部を考えている高校生・浪人生の方にも,是非手に取ってもらいたい。ワクワクするような勉強が法学部でできるということが,よくわかるはずだ。

実は,この本については,執筆者の一部の方から献呈を受けている。ここでは,それらの方の執筆部分について少しだけ感想を述べることにしたい。

まず,憲法(南野)。初版の優れた記述が維持されていて嬉しい。憲法,という日本語の意味というところから,無理なく,実質的な意味での憲法がなぜ重要なのか,それについて学ぶことにどのような意味があるのか,ということを教えてくれる。南野さんは,東大法学部研究室の先輩にあたるが,これまで,それほどご一緒する機会は多くなかった。しかし,昨年秋の日本公法学会の際に声をかけていただいた機会に皆で食事をして,南野さんの研究者・教育者としての決意と責任感を目の当たりにした。私自身も大学生の頃教えていただいて,また書かれたものを読んで大変感銘を受けた樋口陽一先生の『憲法』が参考文献の最初のものとして挙がっているのも喜ばしい。これは,確かに少し古いが,特に人文系のバックグラウンドの方に読んでほしいと思う本である。

刑法(和田)。親しい友人であることを別にしても,今回,一番はっとさせられたのが,この刑法の部分である。「想像または妄想の重要性」題して,とりわけ主観的要素が犯罪の構成要素とされていることの危うさをヴィヴィッドに示してくれている。刑罰というものが場合によってはいかに危険なものになりうるかを説くことで, 同時に刑法について考えることの重要性を浮き彫りにしてくれている。

行政法(興津)。最もお世話になっている同僚の一人である。彼との議論から学ぶことは,本当に多い。彼の強みは,問題状況をたちどころに理解して考えるための枠組みを示せるところにある。今回の叙述も,その本領が発揮されている。法律の留保を素材として行政法学に依拠して考えることの有用性を示してくれている。行政活動の4分類の図で一応の整理がされて読者としては納得するが,すぐにこの分類を支えている2つの二分法が成り立つのか,と考えてしまう。そして,私はすでに行政法を考えることの面白さに取り憑かれてしまっていることに気づくのである。

法哲学(安藤)。言わずと知れたスーパースター。普通に会話していても十分に面白くまた楽しいのでそれで満足してしまい,なかなか安藤の論文や著書を精読しようという気にならない,という困った事態が生じている(あらゆる安藤成分を吸収しようと努めている世の中の安藤ファンには怒られそうだが)。本人から,実はここに注目してほしいと教えられた毒の要素も面白いのだが,そのことはここで書くべきではないだろう。むしろ,私は,(恥ずかしながら)頭の中でかなり混乱していた法哲学についての理解が少し整序されて,勉強になった。メタ倫理学の世界をちょっと覗いてみたいと思う。

租税法(神山)。彼自身のいい意味でぶっ飛んだ研究を脇において,オーソドックスな租税法の内容をきちんとまとめてくれている。文献の選択も的確。私が選ぶとしても,大体同じものになると思う。それにしても,これを読んだ上で彼の授業に臨む学生は,驚くだろう。こういう研究者を輩出できるのが,租税法のいいところ(私から見て彼は同門の少し後輩にあたり,常に一緒に議論しているメンバーの一人)。 分野の枠にとらわれずに,知的好奇心を極限まで満たしたい人は,是非租税法研究者を選択肢に入れてほしい。

経済法(大久保)。前任校での同僚であり,学問に対する真摯な姿勢,教育にかける情熱には学ぶことが多かった(というか,書かれたもの等を通じて今も学んでいる)。私が予告なく経済法学会を傍聴しに行った時,報告者として壇上にいるのに,傍聴人の私を発見してくれた。そのくらい余裕がある人物である。今回の記述は,会社法と知的財産法に絡む事案を素材としての経済法入門で,大久保さんの授業を聞いている感じがした。紹介されている公取委のホームページに出ている資料を読んでみようと思う。

知的財産法(小島)。大学時代・研究室の2年後輩。本当に義理堅く男気のある人で,ちょうど20年前の彼(及びその友人であり現在の彼の同僚である平山賢太郎)のある件に関する配慮を私は忘れない。今回は,ファッションを素材として,知的財産法がどのように社会と関わっているか書いている。あえて,知的財産法の枠組みやテクニカルタームに関する叙述を極限まで減らして,背景にあるファッション自体についてしっかり書き込んでいるところに彼のこだわりと覚悟を見て取った。私の妻がやはり一定の覚悟を持って執筆し公表した論文を引用してくれているのも大変嬉しい。

環境法(島村)。研究室の先輩であり,また,今は同僚として大いにお世話になっている。昔から環境問題に関心があったものの,あまり勉強しないままであったのだが,島村さんからどういうことが問題となっているか教えてもらい改めて関心が再燃している。とりわけ学んだのが,環境問題の難しさ。一定の経済発展を所与とせざると得ないこともあるし,また,複数の環境問題に対する対策同士のトレードオフの問題もある。色々な熱い思いがありつつも,叙述においては正確かつバランスが取れていて,研究者としてこういう風になりたいと思う。今回の『法学の世界』の島村さん担当部分もそう。これを読んで環境法の勉強を始める人がうらやましい。

国際私法(横溝)。公私ともにお世話になっているだけでなく,ビジネス・ローの研究者・大学人としての振る舞いについてお手本にしている先輩。私の書いたものをそれが不十分なものであっても読んでくださり,そのことが私が研究を進める上での大きな推進力になっている。『法学の世界』では,本文では極めて的確な正統派の国際私法の内容紹介をしておられ,その上で,文献紹介でかなり本音ベースのことが書かれていて,その落差が面白い。改めて,ちゃんと勉強しないと,と思う。

ここに挙げたものだけでなく,本全体として強くお勧めできる。ぜひ,一人でも多くの方に手に取っていただきたいと願っている。