2018年5月30日水曜日

2018LS租税法2第7回(5月30日)

補講として開講。


473ページの「6.控除の全否定かタイミングの差異か」は重要。

*そもそも業務の遂行上必要か,という論点もある。

名古屋地判平成24年11月8日(控訴審:名古屋高判平成25年4月26日)は,納税者が「転売した不動産の購入代金が3億9615万4680円であることを前提に,これを売上原価として損金の額に算入して法人税の確定申告をしたところ,処分行政庁から,上記不動産の購入代金は3億6015万4680円であり,差額の3600万円は架空計上されたものであるとして損金算入を否認され」た事案。裁判所は,「内国法人の所得金額の計算上、損金の額に算入することができる支出は,当該法人の業務の遂行上必要と認められるものでなければならないというべきである。そこで,以下においては,XがJに交付した現金3600万円のうち原告出捐に係る1800万円に原告の業務との関連性が認められるかどうかについて検討する」と述べている。

横浜地判平成17年1月19日は次のようにいう(強調は引用者)。
「ところで、法人税法22条3項は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額について、別段の定めがあるものを除き、原価、費用及び損失の額であるとしているところ、法人税法上、海外渡航費が損金に該当するかどうかについて、特段の規定は存在しない。したがって、海外渡航費が費用(同法22条3項2号)に該当するものとして損金の額に算入されるべきかどうかは、当該海外渡航の性質に照らし、それが当該法人の業務の遂行上必要な費用と認められるものであるかどうかによって判断すべきである。そして、当該海外渡航が当該法人の業務の遂行上必要なものであるかどうかについては、渡航者と当該法人との関係、渡航の目的、渡航先、渡航先での当該渡航者の活動及び渡航期間等の諸般の事情を総合的に考慮して判断することが相当である。
 基本通達において、「法人がその役員又は使用人の海外渡航に際して支給する旅費は、その海外渡航が当該法人の業務の遂行上必要なものであり、かつ、当該渡航のため通常必要と認められる部分の金額に限り、旅費としての法人の経費を認める。」(同通達9-7-6)とした上で、「法人の役員又は使用人の海外渡航が法人の業務の遂行上必要なものであるかどうかは、その旅行の目的、旅行先、旅行経路、旅行期間等を総合勘案して実質的に判定する。」(同通達9-7-7)とし、さらに、「法人の役員が法人の業務の遂行上必要と認められる海外渡航に際し、その親族又はその業務に常時従事していない者を同伴した場合において、その同伴者に係る旅費を法人が負担したときは、その旅費はその役員に対する給与とする。ただし、その同伴が例えば次に掲げる場合のように、明らかにその海外渡航の目的を達成するために必要な同伴と認められるときは、・・・その限りではない。」とし、その例示として「国際会議への出席等のために配偶者を同伴する必要がある場合」等を挙げている(同通達9-7-8)のも、上記の判断基準と同様の趣旨に基づくものと解される。」
このような一般論を踏まえて,判決は,法人の役員の小学生の子供2人の海外渡航費について,次のように判断した(現在と役員報酬に関する規律が異なることに注意)。
「そうすると、本件各渡航費は、海外渡航費として原告の損金の額に算入されるべき性質のものではなく、上記のところからすれば、丙の扶養者である甲が個人的に負担すべき費用というべきであり、これを原告が支出したことは、原告の甲に対する臨時的な給与、すなわち賞与として支給したものと認められるから、法人税法35条1項の規定により、原告の損金の額には算入されないものである。
 したがって、本件各渡航費は、原告の本件各事業年度の損金の額には算入されず、また、原告は、甲に対する本件各渡航費の支給について、所得税を徴収し、国に納付すべき義務があるというべきである(所得税法183条1項)。」


損金の第1のカテゴリー
§324.01
最判平成16年10月29日


具体例の補充として以下の事例(東京地判平成27年9月25日)を見てみよう。
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2015/pdf/12725.pdf

「また,同[22]条4項は,同[法人税]法における所得の金額の計算に係る規定及び制度を簡素なものとすることを旨として設けられた規定であると解されるところ,「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」との規定の文言にも照らすと,現に法人のした収益等の額の計算が,法人税の適正な課税及び納税義務の履行の確保を目的(同法1条参照)とする同法の公平な所得計算という要請に反するものでない限りにおいては,法人税の課税標準である所得の金額の計算上もこれを是認するのが相当であるとの見地から定められたものと解され(最高裁平成4年(行ツ)第45号同5年11月25日第一小法廷判決・民集47巻9号5278頁参照),法人が収益等の額の計算に当たって採った会計処理の基準がそこにいう「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」(公正処理基準)に該当するといえるか否かについては,上記に述べたところを目的とする同法の独自の観点から判断されるものと解するのが相当である。
 そして,このような見地から法人税法の課税所得における損金の計算についてみると,一般に,同法22条3項1号に規定する,特定の収益との対応関係を明らかにできる売上原価等については,その収益が計上された事業年度に,同項2号に規定する販売費,一般管理費等については,発生した事業年度に,同項3号の損失については,損失の発生した事業年度に,それぞれ損金の額として算入されるべきものと解するのが相当である。」

過去の年度に計上すべきであった売上原価を損金算入することを否定。そして,納税者の主張する前期損益修正の扱いにつき,次のように述べて,法人税法独自の観点から否認。
「前記(1)で述べたような法人税法22条4項の趣旨に照らすと,企業会計の慣行として広く行われている処理であっても,適正な課税及び納税義務の履行の確保を目的とする同法の所得計算という要請に反する場合には,公正処理基準に該当するということはできず,公正妥当であるとはいえないものとして,法人税法上採用することができないものというべきである。」


損金の第2のカテゴリー
§324.02

§324.03
最判平成20年9月16日

*東京地判平成28年7月19日(横溝大先生(名古屋大学)の評釈あり)

2018LS租税法R&W第6回(5月29日)

§163.01
これは民法で動機の錯誤の説明で出てくる判例。

§163.02
静岡地判平成8年7月18日。時効援用時に一時所得となるとの判断。
東京地判平成4年3月10日訟務月報39巻1号139頁も見ておきたい。長期譲渡所得が生じるかどうかが争われた事案。課税庁が,時効取得時の時価が取得価額であるという(ある意味,甘い)処分をしたのだが,納税者はこの課税処分を争った。
さらに,ケースブック128頁で引用されている,大阪高判平成14年7月25日。

§164.01
「租税回避」という概念はあまり使いたくないが,一応説明。

§164.02
東京高判平成11年6月21日
東京地判平成13年3月28日→東京高判平成14年3月20日(岸事件)も見ておく。