2007年2月21日水曜日

租税法の勉強法(入門編)

租税法が新司法試験の選択科目になったので,授業内容がこの試験に多少制約されるようになってしまった.公認会計士試験では租税法が必修になったが,こちらは法学部の人はあまり受けない試験なので,今のところは,あまり意識していない.教える側としては,租税法を体系的に,わかりやすく教えればいいのであるが,授業と別のところで,「租税法を大学時代に勉強していないが,法科大学院で授業を取りたい.ついては,授業がはじまる前にある程度勉強しておきたい.どうすればよいか」といった質問をよく受けるようになった.今回はこうした質問に答えるつもりで,租税法の勉強法について書く.

まず,ここでいう租税法とは何かという問題がある.単に,所得税法,法人税法はこうなっています,という話では決してない.また,数学を使った経済学の理論というわけでもない.新司法試験や法学部の授業で「租税法」という場合,現行の税制を,それほど難しくない経済学の理論を使いつつ,法的に(分かりやすく言えば,誰がどういう権利を持つとか義務を持つとか)説明する言説の集合といえよう.具体的に言えば,金子宏『租税法』でカバーされている内容と考えてよいだろう.

では,金子『租税法』を頭から読んでいけばよいのか?そうではない.この本は,言うまでもなく非常に優れたものであるが,他の法学の体系書と同様に,1頁目から順に読んでいくには適さない.逆に,金子宏他『税法入門』では簡潔すぎる.むしろ,例えば,『ベーシック税法』を通読し,重要な論点について金子『租税法』(あるいは,清永,水野忠恒,北野編など,)の記述を参照し,重要な判決について,判例百選を参照するのがよいのではないか.

以上のような勉強は,佐藤『プレップ』や三木『日本の税金』などで補うことができる.さらに,興味がある向きは演習書を読んでそこに載っている問題を解けば,理解が深まるだろう.

もっとも,租税法の本当に面白い話題は,教科書を読むだけでは分からない.以上の作業と平行して,
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/taxation/
などで税制の最新の動きをチェックしたり,裁判例や論文を読んだりして,具体的な事例を知るとよい.

今回は,租税法の勉強をしたことがない人が,法科大学院で租税法の勉強をする前に自習するならどうすればよいかということを書いた.その他の場面での勉強法については,またの機会に書くことにする.