2018年5月1日火曜日

2018LS租税法R&W第3回(5月1日)

§121.01
ケースブックでは主として租税法律主義に言及する部分が載っているが,引用されている部分の前には,次のように書かれている。
「論旨は土地の固定資産税の納税義務者は、同税の納期において真実の土地所有権者と解すべきであるにもかかわらず、地方税法の関係条規を右と異って原判決のように解するとすれば、原判決は憲法一一条、一二条、一四条、二九条、三〇条、六五条に違反すると主張するのである。よって地方税法の関係条規を見ると、土地の固定資産税は土地の所有者に課せられるけれども、土地所有者とはその年度の初日の属する年の一月一日現在において、土地台帳若しくは土地補充課税台帳に所有者として登録されている者をいい(地方税法三四三条、三五九条)、従ってその年の一月一日に所有者として登録されていれば、それだけで固定資産税の納税義務者として法律上確定されるから、四月一日に始まるその年度における納期において土地所有権を有する者であると否とにかかわらず、同年度内納税義務者にかわりがないことになっている。かように地方税法は固定資産税の納税義務者を決定するのに課税の便宜のため形式的な標準を採用していることがうかがわれるのである。」
すなわち,固定資産税のいわゆる「名義人課税主義」の合憲性が争われた事案である。

§121.02
重要。最高裁が何を言ったのか,しっかり把握しておく。また,国民健康保険料の決定方法がどうなっていたのか,も。

§122.01
課税要件法定主義。委任立法自体は憲法が許容しているから,どこまでを議会で定めなくてはならないか,ということが問題。基本的には「法規」だが。
行政法一般と租税関係で特に違うのかどうか,ということも一つの論点だが,とりあえずケースブックに載っている裁判例を見ておこう。
「大阪銘板事件」当時の法人税法施行規則はかなり込み入っている。

§123.01
課税要件明確主義。

§123.02
秋田市国民健康保険税事件。
神奈川県臨時特例企業税事件。

§124.01
合法性の原則。
課税庁と納税者の間の合意が許される範囲の問題は,結局,裁判所の権限の問題?(客観的には間違っているかもしれない)両者の合意に,裁判所がどこまで拘束されるか?

2018LS租税法1第2回(5月1日)

§211.02
最判昭和46年(承前)
「更正の請求」について,基本的な条文を確認すること

§211.03
「実現(realization)」 とは(一応の定義):ある者に帰属する経済的価値が,外部に明らかな形で評価されること。売買や交換がその契機としての典型。
アメリカ(租税)法における基本概念:かつて,「実現」が所得税課税のための要件と解されている時期があった。
所得の「発生(accrual)」と「実現」の区別
アメリカでも日本でも,未実現であるとしても発生していれば所得に対して課税できる
立法政策上,未実現の利得に課税しないということにしている場合は少なくない(譲渡所得など)

「帰属所得(imputed income)」
imputeというのは,attributeと同じような意味
見たところ所得はなさそうだが,実際には所得が発生しているがそれを即座に自ら消費しているような場合に,所得がある,ということを説明するための概念が「帰属所得」

§211.05
大阪地判昭和54・5・31
包括的所得概念(純資産増加説)から考えた,とも言いうる判決
事前と事後の経済状態を比較して,差額を(非課税所得ではない)所得と見ている

日本では,不法行為に基づく損害賠償は損害を塡補するものであるということになっているが,政策的に重い賠償金が課されるアメリカでは実損害の塡補を超える部分が所得課税の対象となるか議論がある(→玉國教授の一連の研究。2015年度学部講義ノート43-46ページ)。
日本でも,契約の不履行等に伴い契約当事者が損害賠償金を取得することがありうる。この損害賠償金が,当事者の経済状態を高めるものである場合には,課税の対象となるか?しかし,契約が普通に履行されたとしても,当事者の経済状態は高まるのではないか(そのようなことが想定されないと,当事者はそもそも契約を結ばない)?

最近,損害賠償金およびそれと関連する金員に関する課税関係をめぐる裁判例がいくつも現れている。細かく区分して,それぞれの性質を考えて,課税関係(課税されるか,所得分類はどれか)を判断する必要がある。

§214.01
スタン44-55
似たような概念について混乱してしまわないためには,条文が使っているターミノロジーの正確なところをしっかり覚えるのも大事。

包括的所得概念と所得分類(が存在すること)の緊張関係:正確に言えば,シャウプ勧告以前の「所得の種類ごとに担税力や適切な課税方法が異なる」という思考の残存である。

損益通算に対する制限が果たしている機能=個別的否認規定といってよい:実質的には所得(消費)である要素が控除の対象となってしまうことを防止する機能;恣意的な(実際の経済的地位の変化に対応しない)損失の額を利用して他の種類の所得の額への課税が及ばないことを防止する機能。