2018年5月27日日曜日

2018租税法1第8・9回(5月23日)

補講として開講。

§223.01
最判昭和56年4月24日民集35巻3号672頁(弁護士顧問料事件)
最高裁が示した一般論をしっかり把握しておくこと。

東京高判昭和47年9月14日(日本フィルハーモニー)

最判平成13年7月13日(りんご生産組合。百選第4版に私の解説あり)
民法上の組合は,いわゆるパス・スルー課税に服するが,現実には,源泉徴収義務を負う(この事件の第一審参照)など,事実上の権利義務の主体として活動を行なっている。そのような民法上の組合とその一構成員である組合員との間に,給与所得を基礎付けるような法律関係が成立しうるかどうか,ということが問題となった。最高裁は,これを肯定した。税務署長の処分やこれを認めた高裁判決は,組合と組合員との間の金銭の「分配」と,組合レベルで計算して生じた観念的な利益の組合員への「配賦」とを混同しているきらいがある。

福岡地判昭和62年7月21日(九電検針員)
労働法上の労働者性を主張することが主眼だったのかも。

給与所得と事業所得の区分の,消費税との関係。

厳密にいうと,給与所得の中でも通達によって課税が軽減されているサブカテゴリーがある。所得税基本通達28ー1は次のように定める。
28-1 宿直料又は日直料は給与等(法第28条第1項に規定する給与等をいう。以下同じ。)に該当する。ただし、次のいずれかに該当する宿直料又は日直料を除き、その支給の基因となった勤務1回につき支給される金額(宿直又は日直の勤務をすることにより支給される食事の価額を除く。)のうち4,000円(宿直又は日直の勤務をすることにより支給される食事がある場合には、4,000円からその食事の価額を控除した残額)までの部分については、課税しないものとする。
(1) 休日又は夜間の留守番だけを行うために雇用された者及びその場所に居住し、休日又は夜間の留守番をも含めた勤務を行うものとして雇用された者に当該留守番に相当する勤務について支給される宿直料又は日直料
(2) 宿直又は日直の勤務をその者の通常の勤務時間内の勤務として行った者及びこれらの勤務をしたことにより代日休暇が与えられる者に支給される宿直料又は日直料
(3) 宿直又は日直の勤務をする者の通常の給与等の額に比例した金額又は当該給与等の額に比例した金額に近似するように当該給与等の額の階級区分等に応じて定められた金額(以下この項においてこれらの金額を「給与比例額」という。)により支給される宿直料又は日直料(当該宿直料又は日直料が給与比例額とそれ以外の金額との合計額により支給されるものである場合には、給与比例額の部分に限る。)

§223.02
京都地判昭和56年3月6日

神戸地判平成元年5月22日

実務的には,源泉徴収義務者が183条に基づく源泉徴収をするのか,204条に基づく源泉徴収をするのか,あるいは,源泉徴収義務を負わないのか,ということが問題。
次に掲げる所得税基本通達が示すように,弁護士顧問料事件最判の基準からすると給与所得になり得ないようなものであっても,実務上給与所得として扱われていることがある。

28-7 国又は地方公共団体の各種委員会(審議会、調査会、協議会等の名称のものを含む。)の委員に対する謝金、手当等の報酬は、原則として、給与等とする。ただし、当該委員会を設置した機関から他に支払われる給与等がなく、かつ、その委員会の委員として旅費その他の費用の弁償を受けない者に対して支給される当該謝金、手当等の報酬で、その年中の支給額が1万円以下であるものについては、課税しなくて差し支えない。この場合において、その支給額が1万円以下であるかどうかは、その所属する各種委員会ごとに判定するものとする。」

§223.03
最判昭和37年8月10日
→当時,通達により,一人当たり月額500円までは非課税とされていた。その後,法9条1項5号,令20条の2が定められた。

フリンジ・ベネフィット,「使用者の便宜」理論

最判平成17年1月25日民集59巻1号64頁(ストック・オプション)
所得税法228条の3の2も見ておく。  
299頁の記述に関連して,平成28年度改正における「譲渡制限付株式」の解禁(所得税法施行令84条)が重要(実務サイドからの解説として,TandAマスター647号4頁(櫛笥)参照)。令84条の規定は,基本的に299頁の裁判例の立場と同じ。