2018年5月22日火曜日

2018LS租税法1第7回(5月22日)

261ページの土地改良区決済金事件から

§222.06
最判平成17年2月1日
(無償移転が介在したため)取得費等の引き継ぎが行われる場合における,取得費の範囲。
納税者を救済するというこの時期の最高裁らしい判決であると同時に,前述の「付随費用」を梃子にした法律論を展開している。

§222.07
269頁1は,時間があったらみんなで考えてみる。
東京地判平成3年2月28日
最判平成6年9月13日判例時報1513号97頁
→昨日租税法2で扱った遺留分減殺請求に関する判例との比較。最判平成17年2月1日が出た後から考えると,理由づけは不十分。

東京高判平成23年9月21日
→未分割の遺産を構成する個々の財産については共同相続人が法定相続分に従って持分を有しているとみなされる。この個々の財産の一つを売却して譲渡所得が発生した場合,それは,実質的には,「未分割の遺産に対する所得税」である。しかし,今の日本の所得税法・相続税法では,相続開始時に即座に相続人が遺産を構成する個々の財産を取得するとみなしているので,こうした「未分割の遺産に対する所得税」は,形式的には,共同相続認に対する所得課税と構成されざるを得ない。所得税額の負担については,遺産分割の際に共同相続人間で考慮してもらうしかない。(原審は「ちなみに,同所得税を相続財産の管理に関する費用とみれば,本来的相続分に応じて負担することになり(民法885条,253条),相続税と同様これに該当しないと見れば共有者固有の債務となるが,本件ではいずれにせよAの負担となる」と述べているが,上記のように解するならば,必ずしもそのようには言えないのではないか。)

§222.08
個人的には課税処分にやや無理があると思う,2つの関連した裁判。なぜこのような課税処分が「強行」されたのか。その背後にある,相続税法の実務(財産評価)の問題点とは?
最終的には,父から妻・娘への土地の「負担付贈与」が「(低額)譲渡」として譲渡所得を発生させ(別件訴訟),その直後に行われた妻・娘から浜名湖競艇事業団への土地の売却によるキャピタル・ゲインが短期譲渡所得として扱われる(本件)とされた。
*一般に,負担付き贈与についてこのような課税が行われているのか?債務の承継を伴う相続(「負担付き相続」?)においては,このような課税は行われていないのではないかと思うのだが・・・
*対価を払う,というタイプの「贈与」が本当に「負担付き贈与」なのか,そもそも贈与と事実認定すべきではないのではないかという問題もある。

東京高判平成26年5月19日
→個人から法人への「高額譲渡」。譲渡の対価として申告された部分の一部が一時所得であるとして課税処分が行われた珍しい事例。普通に考えれば,どちらでも税額は変わらないのだが,本件では,(当初申告において)取得費が総収入金額を上回っており,譲渡所得の金額の計算上損失の金額が生じていた。

2018LS租税法2第5回(5月21日)

§322.03
大阪高判昭和53年3月30日

考え方としては,二段階で理解すると良い。
第1に,資産の移転ないし役務の提供を通じて,手放した会社には,どのような課税関係が生じるか。その際,時価での譲渡ないし時価での役務提供があったとみなして(所得税でいう「みなし譲渡」と同じ),課税関係を考える。
第2に,会社に実際に残っている経済的価値(無償譲渡・無償提供の場合は,ゼロ。低額譲渡・低額提供の場合は,受領した対価)と時価との差額をどのように性質決定するか考える。役員報酬?それとも,寄附金?どのように性質決定するかにより,どの範囲で損金算入できるかが違ってくる。
*スタン67-71頁

ケースブック452頁の「対価的意義を有する利益」と513-516頁の寄附金とならない場合についての説明。(→スタン80-82頁。昨年度の租税法2試験問題及びその解説も参照。寄附金のところでまとめて解説する。)

*スタン74-75頁の「一段階説」
要するに,実際の対価がなんであろうと,資産の譲渡が行われた場合に,時価で譲渡が行われたとみなしてキャピタル・ゲイン(ロス)を実現させて課税を行う。

§322.04
これは,そんなに難しくない。所得税でいう一時所得と同じように考える。
個人の側の譲渡益課税,相続税の課税,受贈者たる法人の法人税の課税,の3つについて混乱しないように!
*所得税に関する事案だが,455頁の最判平成4年11月16日判例時報1441号66頁も見ておく(これも,味村治裁判官の反対意見あり)。→昨年度の租税法1の講義資料

*余裕があれば,456頁に引用されている,東京地判平成27年9月29日判例タイムズ1429号181頁を考えてみたい。

§322.05
最判平成18年1月24日(オウブンシャホールディング)
 まずは,なぜこのような取引が行われたのか,考えてみたい。私自身の書いたものとして,百選第5版58事件解説参照。