2018年6月26日火曜日

2018LS租税法R&W第8回(6月12日)

佐藤「スタンダード」

2018LS租税法1第12回(6月12日)

§225.02
最判平成27年6月12日
→匿名組合契約に関する課税関係を明確に示した。 ただし,課税のタイミングについてはよくわからないところがある。通達によれば,

「36・37共-21の2 36・37共-21により営業者が匿名組合員に分配する利益の額は、当該営業者の当該組合事業に係る所得の金額の計算上必要経費に算入する。」

となっているから,匿名組合員は,「共同事業」(判旨のイ)の場合でも,(現実の)分配ベースで課税を受けるということになりそうである。
 しかし,他方で,

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/060117/01.htm

に出てくる「問22」では,

「匿名組合契約の組合事業の損益計算上利益が生じた場合には,匿名組合員は利益配当請求権による利益の分配を請求することができるから,現実に利益の分配がなされておらず,それを留保することにした場合でも,「収入すべき金額」は確定しているものであり,当該金額が総収入金額に算入されることになる。」 

と説明されている。また,損失については(ケースブック331頁でも引用されている)問23で説明されている。

結局のところ,(1)基本的には事業からの収益・費用・損失は営業者に帰属するものの,(2)営業者がその帳簿上,当初の出資額よりも匿名組合員の持ち分が増加した,という処理を行う場合にはその時点で問22に従って即時に匿名組合員に課税が行われ,また,営業者はその分を必要経費に算入でき,(3)営業者から匿名組合員に対して現実の分配が行われる時点では,特に課税関係が生じない,ということになりそうである。しかし,この扱いは,(2)の段階での操作可能性が大きすぎて,妥当なルールとは言い難いようにも思える。 また,(2)で一旦匿名組合員に対して課税された分がその後の事業の失敗によって減少する場合にどうなるのか(問22によれば,即座に匿名組合員にとっての必要経費となりそう),それが問23のルールと整合的なのか,ということは詰める必要がある。さらに,匿名組合員が法人の場合との整合性も確保されていないようである。

§231.01
収入金額の意義(増井論文)

債務免除益(所得税法44条の2)