2020年2月16日日曜日

2019年度租税法期末試験採点基準


2019年度神戸大学法学部租税法 期末試験の解説・採点基準
2020214日 渕 圭吾

1問(配点40点)
法人税法の課税所得計算の仕組みについての説明を求めた。法人税法21条及び22条を引用しておいたので、これらの条文の内容をそのまま写すだけでは不十分である。
概ね以下のように採点した(加点項目は合計10点)。
1)課税所得算定の基本的な仕組み(8点)。益金から損金を控除し(221項)、益金・損金の計算にあたっては直接的には会社法の会計(74条=確定決算主義)、最終的には企業会計に準拠する(224項)こと。「損金経理」についても触れるのが望ましい。
*会社法会計・企業会計への依存を基礎づける政策的な論拠(当事者に対するインセンティブ、手間の削減)についての言及があれば加点した。
2)益金の計算の仕組み(8点)。収益や収入(すなわち、入ってきたキャッシュフロー)という概念に言及してほしい。収益計上のタイミングについて、実現主義ないし権利確定主義、さらには引き渡し基準といったことについて述べてほしい。
*無償取引からの収益発生についての言及(二段階説、清水惣事件等)があれば加点した。
3)損金の計算の仕組み(8点)。益金を基礎に、それに対応する費用を同じタイミングで計上すること(費用収益対応の原則)。(条文に書いてあるが)損金の3つのカテゴリーそれぞれの意義。
*踏み込んだ叙述に適宜加点。
4)その他(6点)。課税年度を人為的に区切っているが、欠損金の繰越控除・繰戻還付を認めており、法人がゴーイングコンサーンであることに配慮していること。
*非営利法人等、課税対象となっている所得が限られている納税義務者についての言及があれば加点した。

2
1】については、以下の(1)及び(2)について基本的な事項が書かれていれば各15点を満点として評価し、深い理解を示すと思われる叙述につき10点を上限として加点した。
1)消費税の様々な仕組みとその中における付加価値税=日本の消費税の特徴。
2)日本の消費税の具体的な仕組み。納税義務者、課税標準、仕入税額控除等。
2】についても、以下の(1)から(3)について基本的な事項が書かれていれば各10点を満点として評価し、深い理解を示すと思われる叙述につき10点を上限として加点した。
1)恒久的施設(PE)の有無により課税の仕組みが異なることの指摘。
2PEがない場合に(非居住者・外国法人に対する)源泉徴収で課税関係が終了することの指摘。
3PEがある場合には、非居住者・外国法人自体が所得税・法人税の確定申告をしかつ租税を納付する必要があることの指摘。

*第1問、第2問については、単に列挙した用語のみを解説する答案が散見された。そのような答案の評価はいきおい低くなっている。

3
映画を実際に鑑賞したことがうかがわれる場合には、基本的に15点を与えた。分析の鋭さに応じて適宜加点した。

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