2018年4月18日水曜日

2018LS租税法R&W第2回(4月17日)

金子『租税法』第1編租税法序説を読む(その2)

租税法律主義については,かなりの議論がある(→フィナンシャル・レビュー)。それは,前回申し上げたような,この概念の実際上の重要性にも由来している。

第2節 租税公平主義

論じるべきことはたくさんあるが,意外と未開拓。
→昨年度の学部租税法講義
詳しくは,ケースブックに沿って勉強する。

第3節 自主財政主義

これが一つの柱としてあがっているのが,金子『租税法』の特徴(『概説』も同様)。

第5章 租税法の法源と効力

第1節 租税法の法源
憲法は,それに反してはならないという限りでの「法源」。条約についても憲法と同様に考えるか?
告示の位置づけは,行政法学者等と少し違う。

第2節 租税法の効力(適用範囲)
ケースブック§125.01
最判平成23・9・22民集65巻6号2756頁
金子先生の言う「遡及立法禁止原則」は,望ましいものという意味,指針としての原則であって, 例外を許さないものではない(他の事情との考量に服する)ことに注意。
最高裁判決以前の学説(「期間税」などを論じていた)と最高裁判決の距離。
*木下昌彦編『精読憲法判例[人権編]』第17章扉,54事件解説(いずれも,村山健太郎(学習院大学教授)執筆)を見ておくこと。

第6章 租税法の解釈と適用
第1節 租税法の解釈
一般論「その解釈は原則として文理解釈によるべき」
租税法と私法
(1)借用概念と固有概念
(2)私法上の法律行為と租税法

租税回避:第21版と第22版の叙述の差異!難しい問題。

信義則(禁反言の法理)

第2節 租税法の適用
どうやって事実認定するか。パラツィーナ事件の第一審,売買か交換か(岩瀬)事件参照。

*次回からケースブックに沿って進める。

2018年4月17日火曜日

2018LS租税法1第1回(4月17日)

進行予定・休講と補講の予定は配布物のとおり

「ケースブック租税法」に沿って進める。佐藤「スタンダード」と「租税法判例六法」は入手して授業に持ってくること。

 縦糸と横糸としての,所得分類論,収入金額・必要経費。やや特殊な譲渡所得関係。

§211 所得概念(§211.04を除く)

所得算定のルール(§214)の背後仮説としての「所得概念」。条文の解釈の指針となる。
歴史的な形成・発展過程はそれ自体として興味深い(→藤谷武史「非営利公益団体課税の機能的分析—政策税制の租税法学的考察(1)-(4・完)」国家学会雑誌117巻11・12号1021-1129頁,118巻1・2号1-110頁,118巻3・4号220-322頁,5・6号487-599頁の第2章(上記(1)および(2))におけるサイモンズの構想。なお,渕「所得の構成要素としての純資産増加」金子他編『租税法と市場』所収(イギリスとドイツの差異を強調)も)。
しかしここでは,金子宏によるオーソドックスな理解及びサイモンズによる定義(178ページ)をしっかり押さえておくこと。
実定法の解釈との関係では,「収入金額」にあたるか否か,という問題として立ち現れる。

神戸地判昭和59・3・21
なぜこの補助金を収入金額に算入しないといけないのか?
受け取った補助金の支出の際の扱いはどうなっているのか?

佐藤4ページ冒頭の定義はそれ自体正しいものが,実際に使う際には要注意

最判昭和46・11・9民集25巻8号1120頁(利息制限法違反利息)
金融業者に対する課税事案の背景:当時の経済状況,当時の大蔵省の役回り。
実定法の解釈論としてはここでも「収入金額」の意義
背景として,旧通達での違法利得への課税に対する消極的な態度
最高裁が何を言っているか,しっかり理解しておくこと








2018年4月16日月曜日

2018LS租税法2第2回(4月16日)

ケースブック§312

最判平成27・7・17民集69巻5号1253頁(百選6版[田中啓之」参照)
どのような事案か?
納税者(を勧誘した金融機関)はどのような節税を狙っていたのか?cf. パラツィーナ事件
最高裁は何を言ったのか?
2つの基準のどちらに該当するのか。

課税される所得の範囲(408ページの表)
「非営利型法人」という類型があることに注意

最判平成20・9・12(ペット葬祭業)
最高裁によれば,収益事業に課税することの趣旨は?
最高裁の立てた一般論(考慮要素)。喜捨か対価かは社会通念に依らざるを得ないか。
本件への当てはめ?
そもそも,本件ではなぜ,課税処分が行われたのだろうか?事案の細部に注目すると,この宗教法人の他の活動,本来の宗教活動と認定されうる活動も含めて一括した対価収受。

*藤谷武史の一連の研究(公益法人・公益信託。所得概念(の背後にある社会像)との関係)

福岡高判平成2・7・18(天下一家の会)
民事実体法,民事手続法の判例との関係(→渋谷評釈の厳しい批判)
 課税処分が是認されなかった実質的理由は?破産していたから?
借用概念論とは。

法人成りについては,同族会社を論じる中で考えることにする。(法律時報2018年2月号,『所得課税の国際的側面』第2部も参照)

ケースブック§321

法人税法22条1-3項の意味内容。
貸付金・借入金の扱い…収益にも費用にも計上しない。なぜか?
所得税法との比較(所得税法を勉強してから?)

企業会計との関係
企業会計のルールと税務会計のルールが統一されていることのメリット
両者が統一されていることのデメリット

(以下次回)
1966年の「意見書」に反映される各界の本音とは?
どの規定が問題となるか?
「申告調整」とは何か?
(「スタンダード」に要領の良い説明がある)

最判平成5・11・25民集47巻9号5278頁

最近の裁判例について


2018LS租税法R&W第1回(4月10日)

金子宏『租税法』第1編租税法序説を読む(その1)

なぜこの部分を読むか。ケースブックや他の教科書には必ずしも十分に書かれていない,現代日本の租税法の基本的発想や,暗黙の前提を読み取ることができる。単に通説であると思って安心しないで,その斬新性や過激さを知ってほしい(税務弘報59巻3号111頁に掲載した書評も参照されたい)。

第1章 租税の意義
第1節 現代国家と租税
資金調達…憲法29条との関係でのコメントに注目
再分配…これを強調する「リベラルな」側面。戦後の政権政党も,この部分に手をつけていないことに注意。
景気調整…このような機能を認めない見解との緊張関係。

第2節 租税の意義と種類
定義については,大島訴訟最高裁判決も参照。
租税の種類については,収得税・財産税・消費税の意義をしっかり押さえておく。 なぜこられ全てが存在するのか。(→渡辺智之「タックス・ミックスについて」)

第3節 租税の根拠
利益説と義務説
地方税における議論

第2章 租税法の意義と特質
第1節 租税法の意義と範囲
租税法律関係(他の本にあまり書いていない。しっかり押さえておく。):権力関係説と債務関係説。ドイツの債務関係説によって租税法が成立したと言いつつ,アメリカの議論を参照した所得課税の基礎理論(所得概念)を踏まえた体系,という一種の接ぎ木構造。

第3章 歴史
最初の所得税法の成立(1877年)から所得税法・法人税法の仕組みの完成(1940年)という流れ。そして,その直後(戦後)に生じた改変。金子はシャウプ勧告の重要性を強調するが,増井は1940年法との連続性への注意喚起。
戦後は,消費税法の成立(1988年)が一つのターニング・ポイント。消費税法の導入の理由に関する大蔵省の説明と,政治学者(加藤淳子)の説明。

第4章 租税法の基本原則
第1節 租税法律主義
租税法律主義の「機能」を強調する金子説の独創性と,実務における重要性(第22版75頁)。ここ20年くらいの判例の流れに通底する。
*文献として,「租税法律主義と「遡及立法」」


2018LS租税法2第1回(4月9日)

租税法関係3科目の導入。

ケースブック租税法(第5版)§311
所得税と法人税の関係をどう捉えるか?
所得税だけ存在する場合に生じてしまう,課税の繰り延べ(による租税軽減)を補うために,法人税が存在するという説明(→シャウプ勧告)。
法人税が所得税の補完税(としてちょうどいい)ならば,両者の調整は不要(クラシカル・システム)。
これに対して,法人税と所得税が並存することによって,所得税のみが存在する場合よりも,個人の租税負担が過剰になる,と認識するならば,「統合」が必要になる。
法人段階での調整と個人段階での調整があるが,まずは,「インピュテーション方式」を理解しよう。
*文献として,ケースブックに引用のもの,渡辺先生の「スタンダード」のほか,法律時報2018年2月号の特集。