2020年1月21日火曜日

2020年1月20日神戸大学法学部租税法授業補足

2020年1月20日の租税法の授業でお話しした,恒久的施設帰属所得についての「独立企業の原則」について補足します。
慌てていて,前提を申し上げるのを忘れていました(ご質問くださった方に感謝します)。

恒久的施設(例えば,支店)の所得を算定するに際して,条文にも書いてあるような「独立企業の原則」という擬制を用います。これは,支店と本店(厳密に言えば,法人のうち支店以外の部分)とが同一人格であり,それゆえ,支店と本店の間に私法上の取引が成立しない(存在し得ない)ことを前提に,あたかも支店と本店が別の法人格を有し,かつ,両者が独立当事者間の関係で取引した場合に成立する対価が支払われたとみなすことを意味します。

授業中に挙げた例で言えば,銀行の本店から支店に対して100万円を渡し(これは,同一法人格の内部なので,私法上は「無」です),支店がこれを顧客に対して貸し付けたとします。この場合,通常の独立企業間(この例では,銀行相互間)で支払われる利子率が6パーセントだとすると, 支店から本店に対して年間6万円の利息を支払う,とみなすことになります。

以上の問題については,学会デビュー論文を基にした著書『所得課税の国際的側面』で論じています(授業との関係では読む必要はありませんが)。

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