2018年4月16日月曜日

2018LS租税法R&W第1回(4月10日)

金子宏『租税法』第1編租税法序説を読む(その1)

なぜこの部分を読むか。ケースブックや他の教科書には必ずしも十分に書かれていない,現代日本の租税法の基本的発想や,暗黙の前提を読み取ることができる。単に通説であると思って安心しないで,その斬新性や過激さを知ってほしい(税務弘報59巻3号111頁に掲載した書評も参照されたい)。

第1章 租税の意義
第1節 現代国家と租税
資金調達…憲法29条との関係でのコメントに注目
再分配…これを強調する「リベラルな」側面。戦後の政権政党も,この部分に手をつけていないことに注意。
景気調整…このような機能を認めない見解との緊張関係。

第2節 租税の意義と種類
定義については,大島訴訟最高裁判決も参照。
租税の種類については,収得税・財産税・消費税の意義をしっかり押さえておく。 なぜこられ全てが存在するのか。(→渡辺智之「タックス・ミックスについて」)

第3節 租税の根拠
利益説と義務説
地方税における議論

第2章 租税法の意義と特質
第1節 租税法の意義と範囲
租税法律関係(他の本にあまり書いていない。しっかり押さえておく。):権力関係説と債務関係説。ドイツの債務関係説によって租税法が成立したと言いつつ,アメリカの議論を参照した所得課税の基礎理論(所得概念)を踏まえた体系,という一種の接ぎ木構造。

第3章 歴史
最初の所得税法の成立(1877年)から所得税法・法人税法の仕組みの完成(1940年)という流れ。そして,その直後(戦後)に生じた改変。金子はシャウプ勧告の重要性を強調するが,増井は1940年法との連続性への注意喚起。
戦後は,消費税法の成立(1988年)が一つのターニング・ポイント。消費税法の導入の理由に関する大蔵省の説明と,政治学者(加藤淳子)の説明。

第4章 租税法の基本原則
第1節 租税法律主義
租税法律主義の「機能」を強調する金子説の独創性と,実務における重要性(第22版75頁)。ここ20年くらいの判例の流れに通底する。
*文献として,「租税法律主義と「遡及立法」」


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