2023年2月13日月曜日

2023年度に担当する授業について

 2023年度は、神戸大学大学院法学研究科・法学部で以下の授業を担当します。

 

(1)法科大学院

①租税法1(前期・2単位)

出版予定の講義ノートを利用して、主として所得税法についてお話しします。通常大学院の学生も履修できます。

②租税法2(後期・2単位)

出版予定の講義ノートを利用して(もしかしたらすでに出版できているかも)、主として法人税法についてお話しします。通常大学院の学生も履修できます。

③R&Wゼミ租税法1(前期・1単位)

事例研究をします。

④R&Wゼミ租税法2(後期・1単位)

同上。

 

(2)通常大学院

⑤実定法学特殊講義(租税法)(前期・2単位)

法学部の「外国書講読」と兼ねて行います。Ruth Bader Ginsburg裁判官の生涯を扱った映画のスクリプトと関連する資料を読んでいきます。

⑥演習「法学政治学論文指導」(前期・後期、各4単位)

半分は法学部の「租税法演習」と兼ねて行います。残りは、租税法・制定法の解釈についての基本的な文献を会読します。私が指導している大学院生のみが履修できます。

*この他、「Japanese Legal System II」で1コマ担当します(前期)。

 

(3)法学部

⑦租税法(後期・2単位)

 出版を目指している一般向けの書物の原稿を利用して、租税法及びその周辺についての興味深いトピックを取り上げてお話しします。

⑧外国書講読(前期・2単位)

上記⑤を参照してください。

⑨租税法演習(前期・後期、各2単位)

いわゆるゼミ。前期は法人についての日本語・英語の文献を読んでいきます。主として憲法学の内容を扱います。UCLAのAdam Winklerが執筆した書籍を中心に構想しています。後期のテーマについては追ってお知らせします。


2022年3月28日月曜日

2022年度に担当する授業について

 2022年度は、神戸大学で以下の授業を担当します。

 

法学部

演習(前期・後期。いずれも2単位)=いわゆる「ゼミ」

租税法(後期。2単位)


法科大学院(大学院・実務法律専攻)

租税法1(前期。2単位)

R&Wゼミ租税法(前期。2単位)

租税法(後期。2単位)

 

通常大学院(大学院・法学政治学専攻)

実定法学特殊講義(租税法)(前期。2単位)

演習(前期。2単位)=私が指導している大学院生のみ

 

 

2022年度前期大学院「実定法学特殊講義(租税法)」で扱う文献

 2022年度前期に毎週木曜1限に「実定法学特殊講義(租税法)」を担当します。

シラバスはこちらです。

https://kym-syllabus.ofc.kobe-u.ac.jp/kobe_syllabus/2022/43/data/2022_1J257.html

 

シラバスにはアメリカ公法の研究をするように書きましたが、やや範囲を広げて、国際的な公法に関する査読誌である

International Journal of Constitutional Law

に掲載された比較的短い論文を数本、読んでみようと思います。

このような授業を展開する理由は、近年、日本の法学界でも国際的な査読誌に投稿することに関心が寄せられているところ、私は必ずしも国際的な査読誌を継続的に読んでいるわけではなく、どのような論文が国際的に査読誌にアクセプトされるのかわかっていないからです。

 私自身は租税法を中心として研究してきており、憲法・行政法については十分な知見がありません。そのような私が講義するため、論文の内容について高度に専門的な読解を提供できるわけではありません。それでも、私と一緒に英語の論文をゆっくり読んでみたい、と思う方は履修して下さい。

上記の雑誌は、比較公法に関する権威ある雑誌で、この雑誌を母体とした国際学会には興津先生や木下先生がコミットしておられます。私もこの学会に参加したことがあります。

具体的に読んでみようと思う論文は、現時点では、以下の通りです。いずれも、神戸大学附属図書館のデータベースから本文をダウンロードすることができます。


Bosko Tripkovic, The Morality of Foreign Law

N. W. Barber, Why Entrench?

Robert Leckey, The Harms of Remedial Discretion

Sandra Fredman, Substantive Equality Revisited


履修をお考えの方は、第1回の授業(4月14日)に教室にお越し下さい。ただし、可能であれば、事前に、私のメールアドレス(Researchmapで公開しています)に履修を考えている旨ご連絡をいただけると助かります。よろしくお願いいたします。

2021年11月14日日曜日

文書通信交通滞在費の非課税問題

小野泰輔議員による問題提起及び吉村大阪府知事による非課税への批判。

https://twitter.com/taisukeono/status/1459078706320711685 

https://twitter.com/hiroyoshimura/status/1459446482135040000


租税政策の面からも、それ以外の面からも、完全に非課税であることは全く正当化できないと思う。そこで、非課税となった経緯を調べてみた。

 

国会法(昭和22年法律第79号)38条を受けた,国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律(昭和22年法律第80号)に非課税規定がある。

国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律等の一部を改正する法律(昭和41年法律第15号)により、国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律に9条2項が追加される。その内容は以下の通りであった。

「前項の通信交通費については、その支給を受ける金額を標準として、租税その他の公課を課することができない。」

 https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/05119660331015.htm

通信費(通信交通費)については、この規定が設けられる前においても事実上非課税の扱いであったらしい。 1965(昭和40)年8月10日に開催された第49回国会参議院予算委員会におけるやりとり(会議録33ー34ページ)によると、「この前大蔵省から国会に対して手当の問題、通信手当十万円と滞在雑費十二万、合計二十二万円に対しての税金を払ってくれという申し入れがあった」(市川房枝)。これに対して、福田赳夫大蔵大臣は、次のように応答している。

「議員の立法審査費、それから交通通信費、この両者につきましてただいま非課税の扱いをしております。この二つの費目につきましては事の性質上実費弁償であるというふうにも考えられまするが、これが支給される形態から言いますると、他の交通費だとかいうようなものとの関係から見まして課税対象じゃないかというような議論も起こってくるわけです。前の議論、つまりこれが実費弁償だという一面もありますので、私はこの二つの費目につきまして全額課税をするということはこれは行き過ぎかと思うのでありまするが、他の振り合いから見ましてその二つの費目の権衡上の問題から言いますると、また課税すべきかなとも思いまするが、ただいま、これはいずれにいたしましても最高の府である立法府の問題でありますので、まあ立法府のほうでもいろいろお考えのようであります。その折衝の経過等も承知はしておりまするが、なおしばらく経過を、推移を見たほうがいい。こういうふうに考えている段階でございます。」

 市川は、これに対して、次のような見解を述べている。

「実費弁償ということでいままで税金を取らなかったわけですね。けれども一般の公務員、地方公務員、民間では渡しっきりというものは給与と認めるのだということを税務署が通牒を出しておって、そしてみなそれで税金をとっているわけですね。だから私は国会議員だからというので特別に税金を取らないということは国民に対して申しわけないのだ、それで私に言わせれば少しそれこそ歳費か、手当というのですか、ふやすならふやすとしても税金は国民と同じように支払うほうが国民感情としては気持ちがいいのだ、こういうふうに思うわけなんです。(後略)」

https://kokkai.ndl.go.jp/txt/104915261X00319650810
 
このように課税すべきとの意見が当局から示され、有力な参議院議員がこれに賛同したこともあり、非課税であることを規定の上で明確にしたということなのであろう。 また、非課税規定が所得税法に入っていないということが、当時の大蔵省の意地を示しているように思う。

2021年3月22日月曜日

2021年度に担当する授業について

 2021年度に私が担当する授業として予定しているものは以下の通りです。

 

前期

【学部】

租税法演習(火曜日)2単位(大学院の演習も兼ねる)

【法科大学院】

租税法1(火曜日)2単位

R&Wゼミ租税法(火曜日)2単位

【通常大学院】

特殊講義(水曜日)2単位…アメリカ行政法・租税法の最新文献を紹介します。

演習(月曜日)(上記の学部と合併のものと合わせて4単位)…私が指導教員になっている学生さんのみ

Japanese Legal System II (2単位,オムニバス)2回分を担当(6-7月)

ヤゲウォ大学日本法講義 2回分を担当(4月)

【大阪市立大学法科大学院】

租税法(木曜日)2単位


後期

【学部】

租税法演習(火曜日)2単位(大学院の演習も兼ねる)

租税法(第4クォーター,オンデマンド)2単位

【法科大学院】

租税法2(木曜日)2単位

【通常大学院】 

演習(月曜日)(上記の学部と合併のものと合わせて4単位)…私が指導教員になっている学生さんのみ

 

 


 

2020年2月16日日曜日

2019年度租税法期末試験採点基準


2019年度神戸大学法学部租税法 期末試験の解説・採点基準
2020214日 渕 圭吾

1問(配点40点)
法人税法の課税所得計算の仕組みについての説明を求めた。法人税法21条及び22条を引用しておいたので、これらの条文の内容をそのまま写すだけでは不十分である。
概ね以下のように採点した(加点項目は合計10点)。
1)課税所得算定の基本的な仕組み(8点)。益金から損金を控除し(221項)、益金・損金の計算にあたっては直接的には会社法の会計(74条=確定決算主義)、最終的には企業会計に準拠する(224項)こと。「損金経理」についても触れるのが望ましい。
*会社法会計・企業会計への依存を基礎づける政策的な論拠(当事者に対するインセンティブ、手間の削減)についての言及があれば加点した。
2)益金の計算の仕組み(8点)。収益や収入(すなわち、入ってきたキャッシュフロー)という概念に言及してほしい。収益計上のタイミングについて、実現主義ないし権利確定主義、さらには引き渡し基準といったことについて述べてほしい。
*無償取引からの収益発生についての言及(二段階説、清水惣事件等)があれば加点した。
3)損金の計算の仕組み(8点)。益金を基礎に、それに対応する費用を同じタイミングで計上すること(費用収益対応の原則)。(条文に書いてあるが)損金の3つのカテゴリーそれぞれの意義。
*踏み込んだ叙述に適宜加点。
4)その他(6点)。課税年度を人為的に区切っているが、欠損金の繰越控除・繰戻還付を認めており、法人がゴーイングコンサーンであることに配慮していること。
*非営利法人等、課税対象となっている所得が限られている納税義務者についての言及があれば加点した。

2
1】については、以下の(1)及び(2)について基本的な事項が書かれていれば各15点を満点として評価し、深い理解を示すと思われる叙述につき10点を上限として加点した。
1)消費税の様々な仕組みとその中における付加価値税=日本の消費税の特徴。
2)日本の消費税の具体的な仕組み。納税義務者、課税標準、仕入税額控除等。
2】についても、以下の(1)から(3)について基本的な事項が書かれていれば各10点を満点として評価し、深い理解を示すと思われる叙述につき10点を上限として加点した。
1)恒久的施設(PE)の有無により課税の仕組みが異なることの指摘。
2PEがない場合に(非居住者・外国法人に対する)源泉徴収で課税関係が終了することの指摘。
3PEがある場合には、非居住者・外国法人自体が所得税・法人税の確定申告をしかつ租税を納付する必要があることの指摘。

*第1問、第2問については、単に列挙した用語のみを解説する答案が散見された。そのような答案の評価はいきおい低くなっている。

3
映画を実際に鑑賞したことがうかがわれる場合には、基本的に15点を与えた。分析の鋭さに応じて適宜加点した。

2019年度法学部租税法まとめ


2019年度神戸大学法学部租税法(まとめ)

1)租税をめぐる立法・行政
◎租税の定義・租税が果たす機能
◎憲法84条・租税法律主義
◎日本の財政の概要・税収・国税と地方税
○憲法14条・租税公平主義
◎課税要件
○租税確定手続と租税徴収手続

2)租税法に関する分析枠組み
◎課税繰り延べはなぜ納税者にとって有利か
△租税顧客
△租税裁定取引

3)法人税
○法人税の正当化
○法人税と個人所得税の調整
○公益法人等の収益事業に課税する理由
◎会社法・企業会計と法人税の課税所得算定の関係
○収益費用アプローチ
◎法人税法222項にいう収益(条文の内容を確認)
◎無償による資産の譲渡・役務の提供から収益が生じるということをどう理解するか
◎収益の帰属事業年度
◎損金の3つのカテゴリーと費用収益対応の原則
○減価償却費とは何か
○欠損金とは何か
○組織再編・企業結合に関する税制の基本的考え方

4)消費税
◎消費税の意義とその分類
◎付加価値税(間接税としての多段階一般消費税)の仕組みの特徴
○どのような国内取引に課税されるか
○どのような輸入取引に課税されるか
○非課税取引にはどのようなものがあるか
○免税取引にはどのようなものがあるか
◎消費税の納税額はどのように算定するか(esp. 仕入税額控除とは何か)
○日本における消費税の歴史
○平成28年度税制改正で新たに導入された仕組みとは

5)国際租税法
○国際的二重課税はなぜ生じるか
◎非居住者・外国法人に対する課税の仕組み(esp. 恒久的施設とは何か)
◎居住者・内国法人の国際的二重課税排除のための仕組み
○移転価格税制とは何か