2018年5月1日火曜日

2018LS租税法1第2回(5月1日)

§211.02
最判昭和46年(承前)
「更正の請求」について,基本的な条文を確認すること

§211.03
「実現(realization)」 とは(一応の定義):ある者に帰属する経済的価値が,外部に明らかな形で評価されること。売買や交換がその契機としての典型。
アメリカ(租税)法における基本概念:かつて,「実現」が所得税課税のための要件と解されている時期があった。
所得の「発生(accrual)」と「実現」の区別
アメリカでも日本でも,未実現であるとしても発生していれば所得に対して課税できる
立法政策上,未実現の利得に課税しないということにしている場合は少なくない(譲渡所得など)

「帰属所得(imputed income)」
imputeというのは,attributeと同じような意味
見たところ所得はなさそうだが,実際には所得が発生しているがそれを即座に自ら消費しているような場合に,所得がある,ということを説明するための概念が「帰属所得」

§211.05
大阪地判昭和54・5・31
包括的所得概念(純資産増加説)から考えた,とも言いうる判決
事前と事後の経済状態を比較して,差額を(非課税所得ではない)所得と見ている

日本では,不法行為に基づく損害賠償は損害を塡補するものであるということになっているが,政策的に重い賠償金が課されるアメリカでは実損害の塡補を超える部分が所得課税の対象となるか議論がある(→玉國教授の一連の研究。2015年度学部講義ノート43-46ページ)。
日本でも,契約の不履行等に伴い契約当事者が損害賠償金を取得することがありうる。この損害賠償金が,当事者の経済状態を高めるものである場合には,課税の対象となるか?しかし,契約が普通に履行されたとしても,当事者の経済状態は高まるのではないか(そのようなことが想定されないと,当事者はそもそも契約を結ばない)?

最近,損害賠償金およびそれと関連する金員に関する課税関係をめぐる裁判例がいくつも現れている。細かく区分して,それぞれの性質を考えて,課税関係(課税されるか,所得分類はどれか)を判断する必要がある。

§214.01
スタン44-55
似たような概念について混乱してしまわないためには,条文が使っているターミノロジーの正確なところをしっかり覚えるのも大事。

包括的所得概念と所得分類(が存在すること)の緊張関係:正確に言えば,シャウプ勧告以前の「所得の種類ごとに担税力や適切な課税方法が異なる」という思考の残存である。

損益通算に対する制限が果たしている機能=個別的否認規定といってよい:実質的には所得(消費)である要素が控除の対象となってしまうことを防止する機能;恣意的な(実際の経済的地位の変化に対応しない)損失の額を利用して他の種類の所得の額への課税が及ばないことを防止する機能。

0 件のコメント: