2007年2月24日土曜日

インプットとアウトプット

法学の勉強は,知らないと始まらない,ということが多い.いくらセンスが良くても,いくら頭が良くても,実際に法制度や法律がどうなっているかを知らないと,論文が書けないし,発言もできない.日本の法律だけでなく,外国の法律も知っていることが望ましいとされるから,語学もあり程度出来ないといけない.

しかし,いい論文には,やはり何らかの優れたアイデアが必要である.日本の法律はこうなっています,アメリカの法律はこうなっています,というだけでは,紹介にはなっても論文とは言えない.法制度や学説の前提となっている大きな枠組みを理解せずに,表面的に事象を描くのは,自分の思わぬ方向にその議論が利用される可能性があることを考えると,危険ですらある.何らかの根本的なアイデアがあって,それを具体的な事例で肉付け,できれば論証していく,というのが私の考える理想的な法学の論文である.

ともかく,法学において,アウトプットの分量に比して,そのために必要なインプットの分量は多い.ある程度着想があってもなお,それを論証するために文献を渉猟することも少なくない.というのも,書き表したいアイデアがあるのに,それを裏付けるものが足りていないということが多いからだ.

こういうとき,ある意味,かなりイライラする.直接関係ないものまで,いろいろな文献を見て,使えるデータや判例がないか探さねばならず,多くの場合,徒労に終わるからだ.もっとも,アイデアがあるときにこそ,様々な文献を読まなくてはならないとも言える.自分の中で何か枠組みがあれば,その枠組みを検証する形で,能動的に文献を読むことができ,そうすると新たな発見の可能性も高くなるからである.いずれにせよ,アウトプットをしたいときにこそ,インプットをしなくてはならない.しかし,インプットが自己目的化すると,アウトプットに結びつかなくなる.難しい.

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